蓮の花うた♪

蓮井美加が日々思うことや、パリでのエピソード等を、本人が撮影した写真と共に書きつづるもの。

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ラオス写真記・二つの音との出会い

 

 

                                 

 

ラオスのルアンパバンの奥地にある農村の不発弾処理現場で聞いた、

その<音>たちは、これからの私の人生を大きく変えることになるだろう。

 

「今から実際に、最近発見することが出来た不発弾を爆破処理します。

危険ですから、皆さんには少し離れて頂きます。」

そう言われて、私たちは実際に不発弾が見つかったという、

少し小高い丘から降りて、見学が可能な場所まで水田の畦道を歩いた。

前の人の足跡を踏んでしか歩けない危険な道を、

「きゃ~これが道~?」

「わわ~っ、泥で足がすべる~!」

「きゃはは、何やってんのよ~う。」

「あ、あめんぼうだ~。かわい~。」

「暑いね~、もう倒れそう~。」

「そう言えば、もう随分離れたよね~?」

「暑い~いったい気温は何度やろ!?立ってるだけで、この汗見てよ!」「うわ~っ!」

「がははは、だれか田んぼに落ちたよ~!」

こんな呑気な会話をしながら歩き、

私たちはようやく爆破を見学する場所にたどり着いた。

振り返ると元いた場所は、はるか遠くで、処理する人の姿は米粒ほど。

「あんなに小さな爆弾なんだから、ここまで遠く離れなくてもねぇ~。」

しかし、この後、私はもっともっと離れてもよかったと思うことになった。

 

私たちがいた元の丘の上では、爆破処理班の人たちが、

まず近くに村の人がいないかどうか、サイレンを鳴らして注意を促す。

「今から爆破処理をするので、離れてください~!」

しばらくして、もう一度サイレンを鳴らす。

逃げきれていない人がいないか確認する。

そばには誰もいないのを確認したら、導火線に点火。

実際に爆発するのはその約3分後。

点火した人たちもどんどん現場から離れていく。

 

待っている間、私たちはまたもや呑気な会話に、カメラを構えて、

露出はどうの、煙は写るか、花火みたいだろうか、ドキドキする~など、

どこか他人事のようにはしゃいでいた。

「間もなくでーす。」

と言われ、みんな一斉に、丘を凝視。

カメラを持っている人はファインダーをのぞき、

今か今かとシャッターチャンスを狙っていた。

 

 

 

 

ドッゴ~ォォォンッ 

 

それは<音>だけれど・・・、<音>ではなかった。

私には文字ではとても表現できない・・・。

静かな田園風景に突然の轟音。

あまりの<音>にショックで、爆発1発目は、誰もシャッターを切れなかったのではないだろうか。

凄まじいそれは、胸を突き抜け、心を突き抜け、空を突き抜け、どこまでも破壊する<音>だった。

あんな音は今まで聞いたこともないし、あんな音での痛みは受けたことはなかった。

耳の奥はジンジンするし、胸はドクドク苦しい。暑いのに寒気がして、涙が勝手に滲みだす。

 

幼い頃から今まで、祖父母から、本から、映像などから、様々な形で戦争を見聞きし、わかったつもりになっていた自分がとても恥ずかしくなった。人々はどんな思いで戦争を体験してきたのか、私は少しもわかってなどいなかったのだ。小さい爆弾たった数発でこの衝撃・・・。日本に投下された原爆とはいたいはどんな・・・。今も世界中で行われている本当の戦争とはいったいどんな・・・。考えるだけで、震えがくる、恐ろしい。

 

今回ラオスでさせてもらえた、私たちのこの体験は、爆破処理をするのであらかじめちゃんと安全な場所まで誘導されて、いつ爆破するのかがカウントダウンでわかって、それは何発かも決まっていた・・・。

しかし、本当の戦争はそうではない。いつ爆弾が降ってくるかわからない、どこに降るかもわからない、しかもそれが殺意のかたまりで自分の命をめがけて・・・。

 

痛く切なく深い悲しみのその<音>は、私のこれまでの人生を大きく否定した。

この<音>を知った今、私に何ができるのだろう・・・。

 

次の場所に移動するため、また畦道を歩いたが今度は皆、口数が少なくなっていた。当然だ。さっきの<音>が頭の中の一点を貫いていて、鼓動は早鐘のよう。暑さも重なって、フラフラする。頭と身体が別モノのよう。

 

 

 

 

歩いてはいるけれど、頭の中はさっきの<音>のことに集中している。私は叫びたいのか泣きたいのわからず、なんとなく足を止めた。その時だった・・・

 

カラ~ン、コロ・・・カラ~ンカララン・・・」

 

どこからなのか、耳の奥なのか、心の底なのか、遠くから奇妙な音がした。懐かしいような、まあるい、暖かい柔らかい音だ。

 

「カラ~ン、コロ~・・・ン」

 

「ああ、もう私には幻聴が聞こえる・・・さっきのショックでおかしくなったのかな、私・・・。」

その音は、少しづつ大きくなってきた。ちょっと怖い。誰かに聞こえるかどうか尋ねようとしたその時!

 

目の前に、泥んこになった“水牛”の姿があった。背の高い草むらからのっそり出てきて、こちらを不思議そうに見ている。大きい大きいその水牛は泥のせいか灰色で、まるでゾウのよう。ラオスでは今も農作業に水牛の力がかかせないそうだ。その首に・・・

 

「カウベルだ!」

 

さっき優しいく響いたその<音>は“水牛が鳴らすカウベルの音色”だったのだ。

 

私は爆破現場を背に、水牛を目の前に、しみじみ思った。

「ついさっき聞いた破壊の塊、<轟音>を作ったのも人間。そしてこの水牛に美しい<音色>を奏でるカウベルをつけたのも人間。同じ人間なのにどうしてこうも違うのか・・・。切ない、たまらなく切ない。少なくとも、私は水牛にカウベルをつける側の人間でありたい。」と思うことしか、その場ではできなかった・・・。

 

日本に帰国して半年以上経った今も、あの<二つの音>との出会いがまだ耳の奥に、頭の中に、心の中にこだましている。その音をたよりに、これから私は新たに自分がすべき事を考えていきたい。

 

 

 

 蓮井美加

 

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  1. 2008/04/01(火) 00:00:00|
  2. ラオス写真記

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